図書館政策フォーラム「東日本大震災からの復興と震災への備えに向けて」第2部「受援・支援を振り返る―未来への反省」
日時:2011年11月9日 13:00~15:00
場所:図書館総合展第9会場
主催:図書館総合展運営委員会
総合司会:岡本真さん(アカデミック・リソース・ガイド株式会社)
講師:新出さん(白河市立図書館)、西野一夫さん(日本図書館協会)、江草由佳さん(saveMLAK)、菊池和人さん(岩手県立図書館)、熊谷慎一郎さん(宮城県図書館)、吉田和紀さん(福島県立図書館 企画管理部)
第2部の構成
- はじめに:司会による趣旨説明
- 東日本大震災図書館への支援活動を振り返る / 福島県白河市立図書館 新出さん
- 受援者からのコメント
- パネル討論
- 司会による総括
その他の記録
はじめに 司会:岡本真さん(アカデミック・リソース・ガイド株式会社)
- これまでのフォーラムなどでは時間が足りないことが多かった
- 震災において様々な支援が行われた
-
様々な支援関係の報告会では、大本営発表を行うなど活動の列挙で終わってしまうことがある
- そうではなく、どうすればもっと良かったのか、成功の陰にある失敗を話したほうがお互いの学びになる
- 私たちの最大の目的は被災地の方のために支援を一歩でも進めること
- 第2部ではいま何が課題なのか、それを政策単位にまで広げて話をしたい
- ここで反省を作り上げることは、東日本大震災の復興だけでなく、これから起きる震災でも生かすことが出来るのではないか
-
最後のまとめではこの会場にいる人の中で共通の認識や約束をしたいと思っている
東日本大震災図書館への支援活動を振り返る / 福島県白河市立図書館 新出さん
自己紹介
- 2011年3月まで静岡県立中央図書館に勤務
- 2011年4月から福島県白河市立図書館に勤務
- 2011年7月24日に白河市立図書館が開館した
- 新さんは被災者ではないがいまは被災地にいる、不思議な立場
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新さん自身が震災支援に関わっているわけではないので、その点については語れないのでご容赦を
様々な支援活動
- 公的機関の支援活動
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文部科学省では、復旧事業を補てい予算によって実施している
- 子供の学び支援ポータルサイトの開設によってニーズなどのミスマッチを防ぐ
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国立国会図書館
- 職人派遣など、レスキューの派遣
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県立図書館地震の被災という状況によって支援自体が異なっている
- 比較的岩手県は被害が少なかったのでスタートが早かったように思うが、被害の大きかった宮城、福島は大変だったのではないか
- 今回の震災では多数の避難者が発生したため、避難者へのサービスを実施した
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図書館関係団体による支援活動
- 日本図書館協会では、「HELP-TOSHOKAN」などの活動
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図書館振興財団法人
- 図書館が流された、大きなダメージを受け施設を使えなくなった自治体に対してプレハブの提供
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図書館からの寄贈の要求に合わせて備品などの提供を行う
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公益法人、NPOなどによる支援
- シャンティ国際ボランティア会
- 日本ユニセフ協会
- 地域資料デジタル化研究会
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企業による支援
- 大震災出版対策本部
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様々な企業が図書館で必要とされているものを無償で提供しているということが見られた
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その他の団体の支援
- saveMLAK
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Peoject Next-L
支援主体へのコメント
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文科省―既存の施設の復旧補助はあるが、つなぎのサービスのための補助がない
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日本図書館協会―日本図書館協会は図書館全体のコーディネーターとして意義があり、気仙沼に直接支援に行ったことは今後評価を考える必要があるのではないか
- 図書館への支援の窓口としての機能を果たせていたか
- 図書館振興財団―手を挙げることのできない受援者への支援をカバーできていなかったのではないか
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日本図書館協会―日本図書館協会は図書館全体のコーディネーターとして意義があり、気仙沼に直接支援に行ったことは今後評価を考える必要があるのではないか
支援の内容について
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物的支援について
- 受援者が必要としている物品の支援については、評価が高い
- 「うちよりたいへんな地域があるから」と思ってしまい、手を上げられないということがあったのではないか
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資料の寄贈
- 多くの図書館、自治体では寄贈の申し入れの電話を受けるだけでも大変な負担
- しかし、これらは図書館界としては十分考えられる事態であった→震災が起こる前に考えるべきだった
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支援団体が何らかの選別を行い、必要なものだけを送ってくる場合は比較的ニーズが高かった
- 児童書より実用書がニーズがある
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人的支援について
- 復旧作業には作業人員も必要だが、図書館員の方が効率的である
- 支援の形としては、短期ではなく、継続的に支援するのが望ましい。そのためにも公的派遣を
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情報支援について
- 被災地の情報発信は、受援者にとってというより、支援者にとって有効
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各種支援情報の集約による受援者の疲弊の防止にもなる
問題提起
- いつから支援を行うべきか
- 資料寄贈を申し出る方たちに対してどう「対策」するか
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自治体間の職員派遣支援を図書館に実施するにはどうしたらよいか
- 遠隔地同士の図書館で協定を結び、有事の際には支援を行う
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受援者の疲弊を防ぐ支援体制
- 支援者からの申し出に対応しなければならないことで、受援者が疲弊してしまう
- 手を上げられない受援者への支援
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マッチングの可能性と不可能性
- うまくマッチングさせるのはとても難しい
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短期の危機管理からBCPへ
- BCPとは
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今後の支援に向けて
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復興計画・まちづくりと図書館について、政策に絡めて話を進めるべきなのではないか
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復興計画・まちづくりと図書館について、政策に絡めて話を進めるべきなのではないか
受援者からのコメント
菊池さん(岩手県立図書館)
- 図書の寄贈は大変申し入れが多い。また、本に対して思い入れの強い方も多い。遠野文化研究センターを紹介し、そちらに寄贈してもらっている。
- 出来れば岩手県というレベルではなくて、全国的な窓口が出来ればよいと思う。
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被災した図書館にとっては、長期的な専門職の方が現地に入ってコーディネートしてもらうのが必要だと思う。
熊谷さん(宮城県図書館)
- 津波によって全く使えなくなった本というのはそんなに多くない。そんな中で、この本が欲しいという本がピンポイントで寄贈されることは少ない。
- どの本を除籍にするか、まだ判断しかねている段階。支援者の方の本を集めて送りたいという気持ちは大変ありがたいが、現時点で図書を受け入れるか受け入れないか判断するのは難しい。
- 県内の図書館員だけで図書館の支援をすべてするのは不可能。他の地域からの派遣というのはありがたい。
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支援団体と連携が取れていなかった。そこらへんを連絡を取れるような手段はなにかないものか、と考えていた。
吉田さん(福島県立図書館)
- 中間支援団体の必要性を強く感じた。阪神の大震災の時と比べると、情報の速さが格段に違うのではないか。
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県立図書館だけにボランティアの申し入れ、図書の申し入れが来るのであればまだ対処できるが、窓口は図書館だけではない。災害対策本部、教育委員会など。そこに入ってきた情報を改めて図書館で処理するのが大変だった。
- 一度どこかでそれらの情報をフィルタリングするために、中間支援団体が必要だと感じた
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子どもたちへ、避難所へという要望で図書の寄贈があったが、それらは教育委員会で処理した方が良かった
- 子供にとって本は自分の学習や余暇を満たすだけでなく、心の安らぎになるであるということを今回感じた。心のケアのためにも、本を子供に届けることが必要だと感じた
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情報の処理が煩雑になってしまっていた
パネル討論
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西野さん(日本図書館協会)
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気仙沼に行った理由について
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気仙沼は比較的開館の希望の連絡が早かったことや、saveMLAKの拠点を築くという情報があったことから、「支援のノウハウを学ばせてもらう」という意味もあって、気仙沼へ集中的に支援することを決めた
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気仙沼は比較的開館の希望の連絡が早かったことや、saveMLAKの拠点を築くという情報があったことから、「支援のノウハウを学ばせてもらう」という意味もあって、気仙沼へ集中的に支援することを決めた
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気仙沼に行った理由について
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奥山さん(国立国会図書館)
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今後のフェーズとして、
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資料の保存、研究を実施している。ビジネス支援的なものなの、こちらからうかがっていけるものが何かあるか考えていきたい
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資料の保存、研究を実施している。ビジネス支援的なものなの、こちらからうかがっていけるものが何かあるか考えていきたい
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今後のフェーズとして、
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石川さん(図書館振興財団)
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手を上げることのできない受援者に対する支援について
- 図書館振興財団の支援は当初全く報道されなかった。広報活動の弱さは反省するが、報道のありかたが違えば、声なき声の受援者に対しても何か支援が出来たのではないかなと思う
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陸前高田市においてプレハブ図書館を設置したという報道があった。このプレハブは三井物産が寄贈しキハラが書架を入れたと報道された。
- 設置場所をみて驚いた。避難してる人からも利用しづらく、危険だと思われる崖下に設置されていた。報道はこれをきちんと見て評価していたのか疑問だ
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吉田家文書写真帳を複製し、陸前高田市に寄贈した。地域資料のデジタル化の促進を今後一層進めて行くのが目標
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手を上げることのできない受援者に対する支援について
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江草由佳さん(saveMLAK)
- 図書館というと公共図書館を連想しがちだが、一般の人にとって図書館とは大学図書館や専門図書館などでも共通の話題である
- 実際に支援を必要としている人たちが、見捨てられていないということを感じて、安心できるようアピールするのが必要であったと反省している
- 受援者と支援者が直接やり取りするのではなく、中間に入れる専門的な支援団体が必要である。saveMLAKはボランティアとして参加している人で構成されているため、この課題を解決するにはどうしたらよいか、検討が必要である
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司会:岡本さん(アカデミック・リソース・ガイド株式会社)
- 支援機関間での連絡の問題なのか、中間支援団体が必要なのかなど、この点に関してどう考えているか
- 個人的には、「では、日本図書館協会さんお願いします」というのは違うと思う。なんでも日本図書館協会に問題を投げ、解決を期待するのは違うのではないか。
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この部分を踏まえたうえで、どうやってこれらの問題を解決したらよいか、意見をうかがいたい
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西野さん(日本図書館協会)
- いままで休止状態であったメーリングリストを再開するなど、少しずつ連絡体制はできていると思う。
- いま岡本さんから話があったように、対策本部はあるが4人のボランティアで活動している状態である。
- 日本図書館協会では、意見をとりまとめ、政策として提言していくといった、大きな活動をしていくのが本来の役割なのではないかと思っている
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協会として、微力ではあるが、様々な機関などのとりまとめは行っていきたいと考えている
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司会:岡本さん(アカデミック・リソース・ガイド株式会社)
- 支援集めに関しては、日本図書館協会の看板の信頼は相当あると思う。そこにうまく「この目的に対しては幕の中に入る」といった活動の仕方は可能か
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現実的に、知名度の高い組織に属している方が様々な活動がしやすい。日本図書館協会と一緒に活動することで、開かれたボランティア活動を実施することでより効果的な活動を行うことが出来るのではないか
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西野さん(日本図書館協会)
- 継続的に活動を行うには、日本図書館協会だけで活動を行うにはもう限界
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他の団体と協力して活動を行うことは今後是非検討していきたい
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新さん(白河市立図書館)
- 原発付近の図書館ではまだ支援のしの字も始まっていない
- どのような支援が必要なのか、出来るのかもわからない
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今後郷土資料などのサルベージが始める。自分の街に関する新聞のクリッピングを他の地域の図書館でやっておいてもらったり、郷土資料を保存させてもらったり、そういった支援をお願いする機会があるかもしれない。
司会による総括 /司会:岡本真さん
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資料寄贈
- 震災時における寄贈そのもののありかた
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全国規模の窓口を設置し、一本化することでうまくいくかもしれない
- 出版業界に対して影響を与えた。それ以上に、現地の書店を潰しかねない。一方で、書店そのものが機能していない地域もある
- 必要な資料をピンポイントで寄贈・受け入れできるよう、何かガイドラインを策定できないか。適正化が必要である
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受援者支援関連携
- コーディネート機能や、中間仲介機能を果たす団体が必要
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声なき声への遡及
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メディアリレーションの強化、図書館メディアの確立が必要
- その部分に特化した図書館の支援団体、支援ネットワークがあっても良いかもしれない
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メディアリレーションの強化、図書館メディアの確立が必要
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政策課題
- 職員派遣
- 都道府県立図書館の意義
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地域資料のデジタル化
フォーラムをみた感想
震災に関する支援の中で、受援者にどのような負担があり、本当はどのような支援が求められていたのかを、支援者と受援者が同じ場で討論するという貴重な場であったと感じています。支援の申し入れの対処の中でも、特に、図書寄贈の取り扱いに関して議論が活発に行われていましたが、現場では他にも対処が難しい問題が多くあったことと思います。このフォーラムを機に、各自治体や図書館で支援者と受援者の間でどのようなトラブルがあったのか共有し、解決の方法を検討することが期待されます。