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図書館に入った時に受ける印象の多くは、棚の本の並べ方とそれを選ぶ司書がつくっています。日本十進分類は知的宇宙を体系化して表現しているものですが、人は生活や学びの中で欲しいものを考えています。時にそんな感覚が出す言葉はまた別のものなのかもしれません。

札幌市図書・情報館では、「はたらくをらくにする」という明確なコンセプトを生かすため、本の貸出を行わず、レファレンス・サービスを重点的に行っています。日本十進分類法(NDC)を配架に使わず、利用者のニーズを把握し「文章上手になりたい!」「上司の苦悩」「出会いもあれば…(離婚の棚)」「誰か教えて!(恋愛の棚)」などのテーマで本を並べており、さらに「ハコニワ」と呼ぶテクニックで「ドライバーでいつづけること(高齢者免許返納)」によりタイムリーな情報にも取り組んでいます。

課題解決型図書館を標榜していますが、人々の課題や悩みは時として曖昧なもの。まずは「課題の明確化」から、各種専門機関とタッグを組んでの「課題解決」に導くという流れです。具体的には、当館の16人の司書がテーマを決めてから本を選び、手に取りやすいように並べており、これも従来の公共図書館ではやってこなかった新しいチャレンジと評されています。そのひとつの結果として、わずか1500㎡という面積に新たな図書館利用者層も取り込み、開館1年足らずで100万人の来館者を獲得し、ライブラリーオブザイヤー2019大賞の二次審査も通過しました。
 

追手門学院大学では、2019年3月に完成した巨大な三角形の新キャンパス「アカデミックアーク」1棟の外側に教室を配置し、その中空に図書館が浮かんでいるという驚くべき構造の図書館を作りました。
 そして、2階、3階、4階の一辺130mの三角形の廊下部分にはすべて書架が置かれ、カウンターと椅子があり、「ディスカバリープロムナード」として学生がどこに座っても目の前に本がある空間を提供しているのです。つまり、「図書館に行く」のではなく、「図書館の中に教室がある」をコンセプトに設計されたのが追手門学院大学図書館「アラムナイ・ライブラリー」なのです。
 また、追手門学院大学では、2019年4月入学の新1年生全員がPCを持ち、電子図書館サービスを提供しています。「ディスカバリープロムナード」では電子図書のQRコード付パネル展示を行い、学生がスマホで読み取れば、すぐに電子図書を借りることができる仕組みによって、いつでもどこでも本を読むことができることを学生にアピールしています。
 このように図書館に「本を借りに行く」のではなく、図書館の中に「滞在し学修すること」、紙と電子双方の情報資源を適切に使いこなすハイブリッド型スキルを学生が獲得することによって、図書館は教育の質的向上に大きく寄与します。
 教育の結果にコミットすること、それこそが図書館の新しい役割なのです。
 

このように、図書館を利用する人が自分の力で探し物を見つけられて、楽しさや達成感により幸せを得られる場であることも、図書館の大事な見方ではないかと考えています。
日本十進分類を用いない図書館が出てきている土壌や時代背景を読み解きながら、図書館の明日について語りたいと思っています。

2019年11月14日 (木)

15:30 - 17:00

展示会場内

登壇者